惑いの森と遥かな旅路

四つの種族と五つの国から成る世界《イストワール》。 平和な世界に影を落とすのは、北に広がる「惑いの森」オプスキュリテの存在だ。 いつから其処に出来たのか。どこまで広がる森なのか。 どうして魔物が住まうのか。全ての答えはその果てに。 __行こう、オプスキュリテのその先へ。 世界中の誰一人として知らない景色を、君と一緒に見てみたい。 惑いの森と遥かな旅路.



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[16] "流星は東雲の空へ、約束は路地裏の影へ消えて..."

投稿者: シロー 投稿日:2017年 9月13日(水)21時53分12秒 KD182251251004.au-net.ne.jp  通報   返信・引用

──レティが居なくなってから、3年が過ぎた。23歳になった俺は相も変わらず、当ても無しに各地をさ迷う生活を続けていた。
「.........。」
そして今は、依頼をこなす為、オプスキュリテに潜っている。個人依頼でオーガを倒してくれ、というものだった。...報酬が貰えるとは保証されていないが、俺がまともに出来る唯一の事だから、我慢して受けるしかなかった。
「...ない...な。.......、馬車...?」
居るかも分からないオーガの痕跡を探すが、足跡1つ見つけられず。その後、代わりに見つかったのは木製の馬車の残骸。商人が襲われたのだろうか。辺りには真新しい血の後が残っていた。──この少し前に誰かが魔物に襲われたという痕跡を頼りに、更に奥へ、奥へと進んでいく──

「......クソ、オーガどころかオークも居やしないな...。」
数時間掛けて進むも、出会ったのは数匹のゴブリンのみ。きっとあの馬車の人達も、あのゴブリンに殺されたのだろう。もはや刃物とは呼べない程のなまくらだったゴブリンの剣には、赤い血糊がこびりついていた。...俺は依頼者に騙されたのか。そんな疑惑が浮かべば、はぁ、と溜め息を吐いて。予想はしていたが、気分は落ち込んでしまう。そのまま帰路につこうとした矢先......俺の耳に、小さな女の子の声が聞こえた。
「...こんなところで...?...それに...」
よく聞くと、それは泣いている様にも聞こえる。ふと胸を過った不安に、声のする方向へと走り出した──。

「...確か...この辺りで.........。」
『...うぅ...お母さん...お父さん...。...怖いよ....』
木々を掻き分け、岩から顔を覗かせると、その岩にもたれながらしゃがみこんで、小さく泣き声をあげる女の子が居た。...そう、女の子だ。冒険者には見えないほど小さな、女の子だった。桃髪のふわりとしたロングヘアーに、可愛らしい整った顔は、貴族の令嬢に見える程。何故こんな子が此所に?そんな疑問が頭をよぎる。...このまま黙っていても仕方ないか。その子を後ろから覗き見る形になった俺は、かるべく驚かせないように注意しながら、そっと話しかけてみた。
「......君......大丈夫...か?」
『ひっ...!?...だ、誰...ぇっ...!』
びくん!と肩を跳ねさせ、そのまま腰を地面につけたまま、怯えた表情で後ずさりする少女。...驚かせずに、というのはやっぱり無理だったみたいだ。何とかして誤解を解くために、優しく、焦燥している相手にも分かりやすく簡潔に、自分が味方であることを説明する。
「...俺は...冒険者だ。君の敵じゃない。」
こういう時に捲し立てるように詳しいことを話すのは、逆効果だと思う。この位簡潔な方が、相手も飲み込みやすいだろうしな。...詳しいことを話せ、と言われても、上手く話せるか分からないが。
『...そう...なの...?...』
「...ああ。」
こくり、と一度頷いておく。まだ警戒心は解けていないみたいだが、最初の様な怖がり方は無くなったと思う。
...それから暫く、お互いに黙りこくっていた。...流石に気不味くなって、この状況を打破しようと何とか口を開く。
「...その...君は...なんでこんな所に居るんだ...?此処は...魔物が出たりして、危ない...ぞ...?」
『え、えっと...私...。白魔導師を...目指してて...訓練で森に入ったんだけど...み、道に迷っちゃって......うぅ...。』
...そういうことか。何となく理解した。...こんな森の中で泣いているから、そんな事だとは思ったが...実践訓練なら納得だ。それならますます...置いていくわけにはいかないな。
「...そう...か。...それなら、俺がサントルヴィルまで送る...。」
『...え...?...で、でも...お母さんは...知らない人についていっちゃ駄目って...。...おにーさん...変なところにつれていかない...?』
...当然か。これでホイホイ着いていくのも、これからの事を考えると危ないだろう。年齢は幼いが、可愛げな顔で整っている。貴族の玩具や盗賊にも狙われる素質は十二分にあるだろう。それに比べて俺は、顔のせいで警戒が強まっていくばかり。...俺の顔があまり優しいものじゃない事を、久しぶりに恨んだ。
「...ああ...。...俺は...絶対にそんなこと...しないから...。...俺も帰るところだから...ついで、だ...。」
...笑顔の1つでも浮かべられていれば、少しは変わったかもしれないが、あれから笑うことが無くなったからか、上手く笑うことが出来なくなっていた。...頑張れば出来ないこともないが、不器用な作り物の笑いじゃ、逆に警戒されるだけに思えた。
『...ほんとう...?...うそ...じゃない?』
「...ああ。」
これだけで信じてしまうのもどうかと思うが、今は好都合。素直な子で助かった。未だ距離は少し離れているものの、桃髪の女の子はもじもじと両指を弄りながら、微かに笑顔を浮かべていた。
『...そ、それなら...お願いしたいな...私をサントルヴィルまで、案内して欲しいの...!』
こくり、と頷いておく。ごしごし、と涙を拭いて立ち上がり、『準備できたよ...!』と服の裾を払い、見習いの杖を両手で握る女の子を見下ろしながら、置いていかないよう、歩調を遅めに、一歩を踏み出した。
「...それじゃあ...いこう。」
『はーいっ、...わわ、おいてかないでぇ...!』
...帰るのは、かなり遅くなりそうだ。

「...。」
『...ねぇねぇ...おにーさん。サントルヴィルって、こんなに遠かったかな...?』
かれこれ2時間は経っただろうか。まだサントルヴィルには当分着くことはない。俺もオーガを探して、かなり奥まで入っていたんだ、あんな所まで入り込むのは、見習いには危険すぎるだろう。
「...君が居たところは、もう表層とは呼べないくらいには深い場所だった。...まだ、数時間は掛かるはず...だ。」
『...そう...なんだ...。...ゴブリンさんに追われて、必死で逃げている内に、あんな所にいたの...。...怖かった...。』
...はっきり言って、此処まで方向音痴なのは珍しいくらいだと思う。幾らなんでも、迷いすぎだ。大体、治癒、支援が得意な白魔導師が、一人で森に行く事自体、自殺行為なんじゃないか、しかも方向音痴なのに。
「...君...これからは、誰か戦える人と一緒に、森に入った方が良い...と思う。」
『わかった...そうするね。...でも、今はおにーさんが居るし、安心だねっ。魔物さんもあれから、一回も見ていないよう?』
と、にっこり、当初の泣き顔は何処いったのか、と問いたくなる様な無邪気な笑顔を向ける彼女。調子が良いな。なんて思いつつ、前方に視線を戻せば、受け慣れた特有の気配を体で感じた。それは、最もポピュラーで、ありふれた魔物。
「...気を付けろ...。...ゴブリンだ。」
数は2体、はぐれだろう。なんて事は無い。と彼女に伝えようと、振り向けばそこには...
『ご、ゴブリンさん...!?あ、あわわ...どうしよう...どうしよう...っ!』
杖を両手で強く握り、あわあわと慌てふためく少女の姿があった。──この調子でやっていけるのだろうか。そんな疑問が浮かぶが、今はそんな場合では無い。頭を振って思考を隅に追いやれば、ぐっ、と拳を握り...
「...大丈夫だ...。...俺が倒す。......ふっ...はぁっ!」
地面を蹴り、ゴブリンの元へと向かっていく。元々距離が短かったからか、一瞬でゴブリンの前に出ることが出来た。一体目を拳で殴り殺せば、倒れるゴブリンを尻目に2体目をその勢いを乗せた回し蹴りで吹き飛ばし。物凄い勢いで吹き飛んだゴブリンは、木の幹に激突し、そのまま動かなくなり...霧となって消えていった。
『え、えぇえ~っ!?あんな...一撃で...。お、おにーさん強いんだね!!凄い!』
此方に駆け寄ってきて、きゃっきゃっ、と言った感じで楽しそうに周りをぐるぐると回る彼女。年相応だな、なんて思いながら...久しぶりにこんな風に接せられたからか、嬉しさと戸惑いが入り交じったような感覚を覚え。何時もの事だが少し不器用に返事をしてしまう。
「...この位...冒険者なら出来て当然だ...。ゴブリンも倒せないようじゃ...冒険者を続けるのは無理、だ。」
何も間違ってはいない。実際、ゴブリン程度倒せなければ、冒険者で稼ぐことなど、到底無理な話だ。ゴブリンの討伐依頼程度、常駐クエストとして出ているし、報酬も安い。最低でもオーク程度は倒せないと、前線を張る冒険者としては生きていけないだろう。
『...うぅ...それじゃあ...わたしは...冒険者として白魔導師をやるのは...むり、なの?』
...しまった。ぴた、と俺の前で止まって、潤んだ瞳で真っ直ぐに見上げてくる少女に──思わず視線を反らす。...何やってるんだ。早くフォローを入れないと...
「...い、いや...その...っ。...さっきのは、戦う役目の奴に言った言葉で...白魔導師は回復と支援が本業だから...気にしなくて...良い...。」
...一言言っただけなのに、気配りの足りなさのせいで、無駄に心配させてしまった。自分自身に罪悪感を覚える。...こんなフォローでどうにかなるだろうか。上手く話せた自信は無いが、伝わると良いな、なんて内心祈り気味だった。
『...そう、なの?なら...わたしは白魔導師に"なれる"?』
...返ってきたのは予想の斜め上のもの。かなり答えにくい質問が来てしまった。──白魔導師...。未だ、この子の回復魔術とかを見た訳じゃないから、何とも言えないが、こんな方向音痴で大丈夫なのか、そんな心配ばかり浮かんできて。
「...努力次第で、なれる...と思う。」
『...そっかぁ。...えへへ、じゃあ頑張ろうっと!』
...当たり障り無い無難な言葉を選んだつもりだが...ポジティブな子で助かった。かなり前向きに受け取ったらしく、足取り軽く、スキップで俺を置いて進んでいく。──元来た道を。
『おにーさん!早く早くっ、置いていっちゃうよーっ!』
「...サントルヴィルは此方だぞ。」
『えっ...!?あ、ああ待って待って~っ、置いてかないで~っ!』
...この子は絶対に、一人で森に入るのは駄目だな、と思った。

『──日...暮れてきちゃったね...。』
「...そう...だな」
西の空に太陽が沈む。夕焼け色に空が色づく黄昏時。未だサントルヴィルの影は見えず、俺達は野宿をするか、このまま進み続けるかの選択を迫られていた。本当はそろそろ着く予定だったのだが、それは俺の歩く速度の話で、彼女がまだ幼い子供だという事を失念していた事が原因だ。どう考えても非は俺にある。
「...すまない...。 俺の時間ミスだ...。...後、数時間は掛かる...と思う。」
まだ幼いんだ、当たり前だろう。両親と離れるのも辛いだろうし、何より俺と一緒に居る時間が長すぎるのも怖いに決まってる。ちょっとだけ寂しそうな雰囲気の彼女に、向き直って深く頭を下げる。
『え、ええっ...!?...気にしなくて大丈夫だよっ!...わたし一人じゃ、きっと帰れなかったし、わたしがお礼を言わなくちゃ、だよねっ...ありがとうっ。』
両手を胸の前で広げ、あわあわと振る少女。持っていた杖を取り落としそうになりながら苦笑いを浮かべていて。...優しい子だ。お礼を言われるのも何時ぶりか分からない。慣れない感覚に言葉が喉で詰まってしまう。
「...そう...言って貰えると助かる...。...すまない、ありがとう。」
『だから謝らなくていいようっ』と少しだけ頬を膨らませてきた。...白魔導師に必要な"優しさ"は十二分に持ち合わせてる様だ。...冒険者には向いていないと思うけど、医者とか白魔導師みたいな職業には向いてそうだな。なんて事を考えながら、ずっと悩んでいた事を少女へと問う。
「...君は...このまま進むか...一度休むか...どうしたい?」
このまま進めば、夜中辺りには着くことが出来るだろう。だが、飯や休息を挟めば、夜中を回ることになる。周りが見にくい分危ないが、守り抜く位なら出来るだろうし、野宿をしても、俺が夜番をすれば良い。だから実質、どっちでも良いんだ。
『うぅん...、えっと...わたし、お腹が空いてきちゃった...。えへへ。』
お腹を擦りながら苦笑いを浮かべている。確かに、この時間ずっと歩き続けるのは子供にはきつかったかもしれない。一度、休息を取ることにしよう。
「...分かった。...なら、この先にある川で一旦、休憩しよう。」
『ええっ、おにーさん、ご飯あるのっ?』
「...魚を捕ってくる。...焼き魚で、良いか?」
川に手を突っ込んで、震動で気絶させた魚を捕ってこれば良いだけの事だ。焼くには黒焔があれば困らないし、便利な能力を持ったとつくづく思う。
『うん...!焼き魚、わたし好きだよっ、お母さんが良く作ってくれたの!』
「...そうか。...それなら、良い。」
...美味しく作れる程、あまり料理に自信は無いが...それはどうしようもない。我慢してもらうしか。そんな事を内心呟きながら、遠くに聞こえる川のせせらぎを耳に、ゆっくりと歩を進めていった。

『ほのお巻き上げ、照らし出す夕闇~♪紅く燃える焔はぁ、サラマンダーの灯よーっ』
楽しげな歌声を聞きながら、川の水をランプで照らす。魚影を目で追いながら、群れが近付くのを黙って待っていて。...あの子が歌っているのは、ユーマンが暮らす俺の母国で歌い継がれている民謡だ。勿論、サントルヴィルで歌う人は殆ど居らず、この歌を知っているということは、彼女が俺と同じ国で生まれ過ごした事を意味していた。
「...っ、...ふっ──!...っ...と。」
魚群が通過するのに合わせて、勢い良く腕を川に突っ込み、水を震動させ、魚を気絶させる。ぷかぷか、と浮かび流されていく魚を5匹程掴んで、じゃぶじゃぶ、と腕に抱えながら川から上がる。膝位の水深だったが、かなり冷えてしまった。早く焚き火に当たりたい。火の横の岩に座り込み、楽しげに歌いながら肩を揺らす少女を眺めながら、ゆっくりと近付いていく。
『明るく照らす──あっ、わわっ、お魚さん、そんなに一杯っ、どうやって取ったのーっ!?』
此方に気づき、歌うのを止めた少女。腕の中の魚に目を丸くして、驚きの声を上げる。自分も近くの岩に腰を降ろせば、魚に鉄串を刺して、火の周りへと立てていく。
「...秘密、だ。」
『えぇーっ、ずるいっ、気になるなぁっ...』
別に言ってもどうという事はないが、言う必要もない。使う魔術を無闇に明かすのは馬鹿のやる事だし、俺の"震動"(これ)はまだ誰も知らない切り札の様なものだ。いざという時まで、隠し通すのが正しい判断だろう。
「...それより君は...何匹食べたい...?」
なんて、話を逸らす様に話題を振る。むむ、と頬を膨らませた相手は、ぶーぶー、と文句を言い始めた。
『むー...話逸らしてる?...もうっ。...えっとね、わたしは一匹で良いよっ、そんなに食べれないから、それでお腹一杯になっちゃうっ。』
とお腹を擦ってにっこり笑う。「そうか。」なんて短く返答すれば、魚を裏返し、また暫く、ぼーっとした時間を過ごし。ズボンの裾も乾いた辺りで、漸く魚が焼けた。
「...はい。」
『わぁ!美味しそうっ...いただきま~すっ!』
串を手渡すと、嬉しそうに笑って小さくかぶり付く少女。岩に座って、着かないい足をぱたぱたさせながら、ゆっくりと魚を食べていく。...その間に俺が数匹食べ終わったのを考えると、相当遅い食事のスピードだった。

『──んん...もうお腹いっぱいだよ...ごちそうさま~...』
満足げな表情でお腹を擦ってそんな言葉を呟く少女。岩からすとん、と降りれば、火に当たりながら、眠たげに目を細める。
『...うぅん...何だか...眠たくなって...きちゃっ......た...。』
...話している間に、こてん、と首を曲げてそのまま小さな寝息を立て始めた。...寝顔も、子供そのものだった。少しだけ、頬が緩む。
「...おやすみ。」
...なんて自分でもらしくないような事を呟いてしまい、焦って彼女が本当に寝ているかを確認してしまう。──本当に寝ているみたいだ、良かった。...後は、彼女が起きるまで、此処で見張りと火の番をしていよう。一人は慣れている。

...時刻は明け方前頃だろうか。体感時間だから良くは分からないが、多分その辺りだろう。言われてみれば、東の空が明るいような気がしなくもない。だが、日が上るまでにはまだまだ時間が掛かる筈。ぼーっ、と揺らめく火を眺めながら時間を潰していると、眠る彼女に変化があった。
『...──んにゅ...。...ん...ふぁ...?...あれ?わたし...寝てた...の?』
寝ぼけ眼を擦りながら、小さな欠伸をして体を起こす少女。
「...おはよう。」
一応挨拶をしておくと、俺を見た途端に申し訳なさそうな表情に変わった。
『...も、もしかして、わたしが寝てる間...ずっと...?...だよね、ごめんね...?』
...別に気にしなくて良いのに。逆にやりにくい。周りの物を片付けながら、ぶっきらぼうかもしれないけど、返答しておく。
「...慣れてるから、大丈夫だ。」
今思えば、もう少し言い方があったかもしれないが、過ぎたことは仕方ない。火事にならないよう、焚き火をしっかりと消化しながら、そう呟く。──その後は特に何もなく、再びサントルヴィルを目指して歩き始める事になった。

「──もうすぐ...サントルヴィルだな。」
東の空が明るくなって来た頃、少し離れたところに見える町影に、小さく呟いた。
『えへへ、そうだねっ。......その、ありがとう。』
なんて、此方に向き直ってにっこり。お礼をしてくる彼女に目線を向ける。...何だかんだ、こんな子供だけど、短い間でも一緒に旅ができて楽しいと感じていた自分がいる。...現に、別れるのが寂しい、と思ってしまっていた。...そんな寂しさから、俺は変なことを口走ってしまう。
「...──その...君...、...白魔導師を...目指してたんだよな...?...何でなんだ...?」
もう少し、この子と話したかったのだろう。そんな話題を振ってしまうほどには。対して彼女は、むぅ、と少し頬を膨らませ、何やら少し不機嫌な様子。
『...ステラっ。...わたしにはステラって名前があるんだからねっ?おにーさん、ずっとわたしの名前聞かないんだもんっ。...おにーさんの名前は?』
ステラ、というのか。...まぁ、イメージ通りの名前、だな。そんな少し失礼?な感想を抱きながら、本名を言うべきか、偽名を言うべきか考えていていると──空で何かが輝いた。
「すまん...。......夢...か。...──っ?」
眩しくはないが、一瞬で気づく程には明るい...赤く燃える東の空に向かうように輝くのは...流星、いや、どちらかというと彗星に近いだろうか。そんな星が尾を引いて、空を彩っていた。
『わぁ...!流れ星...!...あっ.......──。』
大きな声を上げ、簡単の表情を浮かべたステラだったが、それは何かを思い出したかのような声と共に、何かを願うような表情に変わり。目を閉じて、何やら黙っているステラ。その不思議な光景に、居ても立っても居られず聞いてしまう。
「...なに、してるんだ?」
目を開けて、一瞬不思議そうな表情を浮かべ、直後自慢げな顔に変わるステラ。
『あれ?知らないの?...流れ星が消える前に、願い事を三回言えると、願いが叶うって言われてるんだよ~?...今日の流れ星は全然消えないから、わたしでも言えたっ、初めてだよっ!』
...初耳だ。確かに、普通の流星なら速すぎて言うことが出来ないだろう。未だに輝き続けるあの流星なら、今からでも遅くない。俺も祈るだけ祈っておくことにした。
「...。」
レティとまた会えますように。...なんて。無理だとは分かっていても、もしも神様がいるなら。そんな事を考え、目を開けると、ステラが此方を覗き込んでにこにこと笑っていた。
『えへへ~、おにーさんは何を願ったの?...ちなみにわたしは、白魔導師になれますようにって。』
「...内緒だ。」
『えぇっ!?ずるいよ、わたしは言ったのに~!』
両手をぶんぶんと振って抗議するステラ。自分から言ったのが悪い。軽くあしらいながら歩いていく。

『...サントルヴィル、ついたねっ。...ありがとう。おにーさん。』
サントルヴィルの入り口の白い門の前。くるり、と此方に向き直り、満面の笑みでお礼を言ってくる。どうやら、そのまま俺を連れて町へと入ろうとしているらしい。...それは、ダメだ。俺は立ち止まり。彼女に小さく首を振ってみせる。
「...気にしないでくれ。...──じゃあ、此処でお別れだ。」
『え...っ!?なんで?一緒に入ろうよ、お礼もしたいし...!!』
と、中々引き下がろうとしないステラに、俺はきっぱりと拒絶の意を示す。
「...ダメだ。...詳しくは言えないけど、ダメなんだ。」
俺の反論を許さない強い口調に押し黙ってしまうステラ。...もう少し言い方があったかもしれない。なんて思っていると、苦笑いのままステラがこっちに一歩近づいてきた。
『...えへ、分かったよ、諦めるね...。...でも、最後に1つだけ、約束してほしいの。』
...何だろうか。守れるかどうか、保証はないけど、話位は聞いても良いだろう。「...なんだ?」なんて小さく返答する。すると...
『えっとね...その。いつか、わたしがもっと成長して、白魔導師になれたら...わたしと一緒にまた、冒険してほしいの...!......だめ、かな?』
少しだけ、潤んだ瞳で見上げてくるステラ。...確証が無さすぎるお願いだった。それまで、俺が生きているかも、彼女が白魔導師になれるかも、何もかもが分からない。本当は、約束なんて出来ないけど...
「...分かった。...必ず、また、旅をしよう。」
駄目、なんて言えるはずも無かった。いつか、この約束なんて忘れてしまうだろ、と思って、守れるか分からない約束をしてしまう。彼女の為を思うなら、なるべく一緒にいない方が良いんだ。...だから一緒に旅なんて、する気は無い。にっこり、と笑顔を浮かべるステラの表情が、胸にぐさり、と刺さった。
『えへ、約束だからね!......それじゃあ...また、ね。おにーさん。』
ちら、と最後に振り返って、小さく手を振るステラに、此方も手を振り返しておく。──ステラの姿がサントルヴィルに溶けて、見えなくなって暫くしてから、俺も街へと一歩を踏み出した。...名前を伝えるの、忘れてしまった。

赤い東雲の空に輝く"流星"(ミーティア)は、瞬きながら消えていき。...彼の姿は、確証の無い約束と共に、路地裏の影へと消えていった。




[15] 全てを失った冒険者の、知られざる小さな物語。

投稿者: シロー 投稿日:2017年 8月29日(火)00時29分29秒 pd28b83bd.tubehm00.ap.so-net.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

俺はクロノ・クロスフェイド。ユーマン達が暮らす国のとある小さな街"メガエラ"で生まれた、純粋なユーマンだ。特に家柄は良い訳でも無いが、両親が商人ということもあり、農民よりはマシな生活をしていると思う。"クロスフェイド商店"なんて名前の店を大通りに構えていて、その隣の建物が自分の家だ。母さんは優しく、父さんは少し厳しかったけど、二人とも良い人だ。学校にも通わせてもらったお陰で、友達も沢山出来た。メガエラでは子供を学校に通わせるお金を援助しているらしくて、収入の少ない家庭でも子供を学校に通わせることが出来るみたいだ。流石にうちは援助の対象外だったみたいだけどな。学校の勉強は凄く苦手で、はっきり言ってやりたくなかったけど、学校が終った後、毎日泥だらけになりながら外で遊ぶのは凄く楽しかったし、友達と話に行くだけでも十分楽しめたから毎日通うことが出来た。他の子供と出会って気付いたんだが、俺は生まれつき、体がでかいらしい。体力測定でもぶっちぎりで一位だったし、力も恵まれているみたいだ。そして何より驚いたのが、"魔術"の適正があったこと。炎の魔術だけだが、俺は才能があるみたいだった。その日ほど嬉しかったことは無いね。親にも友達にも自慢して回ったけど、向かいの家の女の子が炎どころか水も風も雷も使えたのには度肝を抜かれた。...ちょっと悔しかった。
/そんな風に毎日を過ごして、気付けば学校も卒業間近。15歳になった俺は、これからの事について悩んでいた。卒業してからどうするか、周りの友達はどんどん決めていくのに、俺だけは決まって無かった。頭があまり良くないから、学力が要る仕事には就ける自信がなかったし、向かいのアイツみたいに色んな魔術が使えるわけでも無いから、どっかのお抱え魔術師にもなれない。これは後から知ったんだが、単一属性の魔術を使える奴くらい珍しくないらしい。これを聞いたときはかなりショックだった。俺の人より優れてる数少ない部分だったからな。...で、この恵まれた体を生かして騎士でもやろうかと思ったけど、人を殺すのはちょっと抵抗があったから、向いていない気がする。...こうなると最後に残るのは、体力を生かして大工とかか、親を継いで商人か。大工なんてやりたくないし、親には悪いけど商人なんてもっと嫌だった。...どうしよう。そんな風に毎日悩んでいたら、ある先生が俺に話し掛けてくれた。
『クロノに向いている職業が1つだけあるよ。』
そう言って笑顔を向けてくれたのは、ユリア先生っていう女の先生。ちょこちょこ街を出ていたけど、家の近くに住んでる人だから、昔から学校外でもよく遊んで貰っていた。だから俺にとっては"姉"みたいな人だ。一応、学校ではユリア先生って呼んでるけど、たまにユリ姉って呼んじゃうこともあって、その時はぷりぷり怒ってくる。そんなユリ姉が俺に放った言葉は、今の俺の悩みを払拭出来る助け船のような一言だった。俺は藁にもすがる思いでその話を詳しく聞いた。
『それはね、"冒険者"、だよ。』
冒険者。聞いたことはあった。"魔物"と呼ばれる人智を越えた化物と戦う人々の事だ。メガエラでは殆ど見ることはないが、噂だけは流れてくる。強くなれば強くなるほど、莫大なお金が稼げるらしい。ユリ姉は続ける。
『クロノは人を殺すのが嫌なんでしょ?冒険者なら、魔物を相手にするから、人を殺す必要も無い。クロノは力も強いし冒険者に向いてる。...それにね、私には分かるの。クロノはね、戦うセンスがあるよ。』
正に的確な回答だった。人を殺さなくて良い騎士の様なもの。それなら確かに俺に向いている。...でも、最後の一言だけが妙に気になった。
「何で俺に戦うセンスがあるって分かるんだ?」
そうユリ姉に聞いてみる。そうして返ってきた言葉は、凄く意外でにわかには信じられないものだった。
『...ふふ、それはね。...私が"元"冒険者だからだよ。』
ここ最近で一番驚いたかもしれない。だから、たまに街を出ていたのか。何だか納得できた気がする。そんな俺にユリ姉はどんどんと後押しして来た。
『私は才能が足りなくて、教師に戻ってきたけど、クロノならきっといけるよ!クロノには才能が絶対ある!』
自分が出来なかった事を俺にさせたいのか、凄い押しだ。...でも、そこまで言わなくても既に俺の心は決まってたんだけどな、"冒険者"を目指すって。正に天職だと思った。...それから俺は卒業までの間、ひたすら炎の魔術の特訓を続けた。そして、ユリ姉の攻撃を避ける訓練を受けた。ユリ姉の拳は重いし、蹴りは鋭い、そして何より疾い。正直、こんなに強いとは思わなかった。気付けば戦い方もユリ姉と似てきて、完全に体を使った"拳闘士"の戦い方になっていた。両親にも冒険者になる事を相談した。最初は心配からか止められたけど、ユリ姉の言葉もあって何とか説得することが出来た。本当に良い人達だ。
/数ヵ月後、俺は学校を卒業し、メガエラを旅立った。友達とも別れの挨拶を済ませ、両親は泣きながら、ユリ姉は何処かすっきりした表情で俺を見送ってくれた。暫くは戻るつもりは無いから、少し寂しい気持ちにはなった。...俺が目指すのは"サントルヴィル"っていう、イストワールの真ん中にあるでかい国。メガエラじゃああまり見かけなかったけど、ユーマンの他にエルフとかネインとかスロープとか、色々な種族が暮らしているらしい。そしてその北には"オプスキュリテ"っていう、魔物が出没する巨大な森があって、殆どの冒険者はサントルヴィルを拠点として、その森に潜っている、ってユリ姉から聞いた。かなり長旅にはなるだろうけど、路銀は十分。いつか何倍にして両親に返してあげたい。そう決意しながら、これからへの期待と不安の中、俺はサントルヴィルを目指し、旅を続けた。
/1ヶ月後位だろうか。漸く無事にサントルヴィルへと辿り着いた俺は、先ずその大きさに驚かされた。でかい。俺の国の王都はまだしも、その中の外れの街だったメガエラとは人口も大きさも桁外れだった。そんな所に生まれて初めてやって来て、迷わない方が不思議だろ、特に俺は方向音痴という訳では無い筈だ。...多分。とまぁ、所謂"迷子"になりながらさ迷っていると、俺が迷子なのを見抜いたのか、話し掛けてくれた人が居た。
『君...何を探しているんだ?見たところ、最近街に来た様だけど...』
なんて俺を上から下までじろじろ見てくる金髪碧眼の女の子。俺と身長は大差無くて、少し大人っぽいが、年齢は俺とそう変わらない様な気がする。いきなりだったから少し驚いたけど、教えてくれるならそれに越したことは無い、と俺は「冒険者ギルドが知りたい」って正直に聞いた。
『あぁ、君は冒険者になりにサントルヴィルに来たんだな。...最初は...そうだな、この道を曲がった先にある、初心者向けのギルドがあるから、そこに入団を希望するといい。』
最初はやっぱりそういう所じゃ無いと駄目なのか。まぁ、まだ15歳だしそんなものか、とは思うけど、この人は俺とそう変わらなそうなのに、結構有名なギルドに入っているらしい。ま、腰のでかい剣を見た時から、そんな気はしてたけどな。俺はその女の子と分かれて、ギルドを目指して歩き出す。周りの人達が、さっきの女の子を見て少しざわめいていた。...もしかしたら、本当に割かし有名なのかも?
/──俺が、初心者向けギルド「スプラウト」に所属して1ヶ月が過ぎた。...正直言って、かなり首尾よく此処まで来れただろう。最初こそ、
『武器も使えないくせに魔法も炎しか使えないのかよ!』
なんて馬鹿にされたが、まだゴブリンに苦戦するギルドメンバーが大勢居る中、俺は既に一人で数体のオークを相手取る事が出来る様になっていた。ギルドメンバーの皆が言うには、はっきり言って、"異常"らしい。ユリ姉の才能があるって言葉が、今になって信じれた気がした。そういえば、他の冒険者達にユリ姉の事を聞いてみたら、とんでも無い答えが返ってきた。
『ユリアさんってそりゃあ、"爆拳のユリア"のことじゃあねぇか。体術だけで魔物を倒す凄腕の冒険者だよ。数年前に引退したって話だけどなぁ...。』
まさか、"二つ名持ち"だったなんて。二つ名は大勢の人に認められた冒険者じゃないと付かないって聞いていたのに。...そんなに凄い冒険者に稽古をつけて貰ってたなんてな。次に会ったら、二つ名で呼んでやろう、そう静かに心に決めた。
/ギルドに入ってから半年。俺もかなり有名になった気がする。少し前にオークのクエストで偶然出現したオーガを、ギリギリだが倒してしまった事で、"スプラウト"の新人冒険者で頭一つ抜けている、といっても過言ではない位には有名になった。"爆拳"に稽古をつけてもらっていた、という事も話してみるとますます噂が広まって、大きなギルドの酒場に招待される事も増えた気がする。...でも、俺よりも有名な奴は居て、俺より1つ年上なだけなのに"剣姫"なんていう二つ名が付いている女冒険者が居るらしい。若手冒険者で有望な奴といえば、真っ先に上がるほど有名な凄い人だ。いつか、"剣姫"を越えるくらい有名になりたい、そう思ってひたすら俺は森へと潜った。
/そろそろ入団から一年だろうか。更に強くなれた気がする。今までは独立して使ってた炎魔法を、体に纏わせる事で身体能力の強化や攻撃の威力の底上げが出来る様になった。知り合いの冒険者に聞くと、これをしたのは俺が初めてらしい。かなりの術制御の腕が居るとも言われた。炎魔術しか使えないことにはコンプレックスを感じていたけど、それを補える才能があったみたいで良かった。最近開発した、右手に全力で炎を纏わせて相手を貫く技も、俺の使える技の中ではずば抜けた威力があって、大物を倒すことにとても適していた。...火傷、という代償もそれなりにあるのだが。そんなある日、俺がトロールを"例の技"で倒して帰って来て、ギルドの扉を開けるとギルドマスターがかなり焦ったような表情で此方に向かってきた。
『クロノ!お客さんが来てるぞ!あんまり待たせる訳には行かないから、ほら、早くしろ!』
趣味で新人育成をしているこのギルマスがこんなに焦るなんて珍しい。俺はギルマスに連れられていった応接室に座っていたのは、30代後半くらいの大柄な男だった。
『君が...クロノくんだね?お話は聞いているよ。』
俺は全く面識がないのに、あっちは俺のことを知ってるのか。何かやらかしたか、俺。「はぁ...どうも。」なんて無難な挨拶をすると、ギルマスに思い切り頭を叩かれた。
『口に気を付けろクロノっ!"ユグドラシル"のギルドマスターだぞ!』
へぇ、他のギルドの...。......は?ユグドラシル?──一瞬思考が固まった。何故なら、そのギルドはサントルヴィルでも最大規模の...所謂大手ギルドだったのだ。
『大丈夫、気にしてないよ。──はは、驚いたかい?そんな呆けた顔をして。』
驚くも何も、開いた口が塞がらないとはこの事だ。何で俺がそんな所のギルドマスターに?...良く見ればこの人は全く隙がない。しっかりと見れば相当の実力者だと分かった筈だ。フレンドリーには見えるが、敵に回してはいけないタイプの人間だと思う。だからなるべく相手の気に障らないように、無難な口調で用事の内容を問う。
「あの...それで、ユグドラシルのギルドマスターが...俺に何の用なんでしょうか?」
隣のギルマスにまた叩かれた。敬語は苦手だ。
『はは、アレスで良いよ。...そうだね、簡潔に言おう。...君、ユグドラシルに入団しないかい?』
──は?今なんて言った?この人、大丈夫か?隣のギルマスも同じ気持ちなんだろう、表情が固まっていた。...確かに、実力は新人冒険者の中ではあると、自分でも思う。けど、だからと言ってあの"ユグドラシル"に入団できるほどのレベルでは無いと思っていたからだ。そんな俺の疑問を解消するようにアレスさんは続けていく。
『君の噂はかねがね。何でも、"炎を纏った強烈な拳で、一撃の元に格上の敵を葬り去る"とか。あの"爆拳"の弟子とも聞いている。この年齢層では"剣姫"《ブレイセス》に続く二人目の"二つ名持ち"だから、何としても君を確保したいのさ。"灼尽"《ヒートエンド》クロノくん。』
自分の技が格上殺しに向いているとはいえ、そんな噂を目の前で語られるのはむずがゆい。それに"剣姫"に続く二人目の二つ名..."二つ名"!?...初耳だった。二つ名云々に至ってはもう夢物語の様なものだったんだが、俺が知らないうちについていたなんて。にわかには信じられないが...さっきアレスさんが言っていた"灼尽"《ヒートエンド》が、俺の二つ名なんだろう。意味を聞いてみると、"灼き尽くす"という意味らしい。...自惚れじゃじゃないけどかっこいい...自分にもっと自信がついた気がする。そして...目標だった"剣姫"に追い付いた事が嬉しかった。いつか越える為の第一歩だ。
『嬉しそうだね、クロノくん。...それじゃあ、最後に聞くけど...ユグドラシルに入団してくれないかい?』
勿論だ。高鳴る気持ちを抑えながら俺は返答を返す。
「はい!これから、よろしくお願いします!」
/俺が、"スプラウト"から"ユグドラシル"に移転して1ヶ月が過ぎた。"灼尽"《ヒートエンド》なんて二つ名が付き、若手の有力冒険者なんて持て囃されて、浮かれていた俺の自信は、俺とペアを組むよう、アレスさんに言われてやって来たとある人物に叩き折られることになった。
『君が...噂の"灼尽"《ヒートエンド》か?アレスさんから話は聞いているとは思うが、私が"剣姫"《ブレイセス》のレティシアだ。....って、君は...もしかして...。』
"剣姫"《ブレイセス》。俺より1つ年上の女冒険者。バスタードソードを軽々と振るう力と、凄まじい剣の腕を誇る有名な"二つ名持ち"だ。容姿も端麗でファンも多く、サントルヴィルではかなりの有名人だと聞く。そんな彼女がユグドラシルのメンバーで、俺とツーマンセルを組む、というのもかなり驚くべき事だが、今はそれよりも驚いている事があってそれどころでは無かった。
「あんたは...あの時の...!」
一年前くらいか、初めてこの町にやって来た時、俺に初心者ギルドの場所を教えてくれた女の子。"剣姫"はあの時の女の子だったんだ。
『ほう...まさかあの時の初心者(ニュービー)が、君だったとは。運命の巡り合わせというのは凄いものだ。...それにしても、もう此処まで強くなってるとはな...』
目を閉じて頷きながら呟く"剣姫"。今思えば、あの時周りがざわめいていたのは、"剣姫"が俺のような初心者に話し掛けたからだろう。運命とかを信じるようなタイプではないが、今回ばかりは巡り合わせのような何かを感じた。"剣姫"とのそんな出会いの後、俺と"剣姫"はペアとしてお互いの実力を知る為、模擬戦をする事になった。場所はギルドの敷地内。立会人はアレスさん。"二つ名持ち"の戦いということもあって、ギルドメンバーだけじゃなく、他ギルドの冒険者や一般人まで沢山の人が集まってくる事になった。
『こんなにも観客が来るとは...少し視線がむず痒いな。...しかし、だからこそ、"剣姫"として私は負ける訳にはいかない、手加減なしだ、本気でいくぞ。だから君も、本気で来てくれ。』
「──当たり前だ。俺は此処で、あんたを倒す!」
こうして、俺と"剣姫"の初めての戦いの火蓋が、切って落とされた。
/───結論を言おう。俺は敗けた。お互い全力を出し切った本気の戦い。惜しいところまで行ったとは思うが、それでも俺は"剣姫"にあと一歩、届かなかった。重く速く、そして何よりも太刀筋を読ませない変幻自在の剣捌き、何度か攻撃を当てることは出来たが、終始俺が翻弄されていたと思う。尻餅をついた俺の首筋に突き付けられた木剣が、それを何よりも物語っていた。一瞬の静寂の後、辺りに響く拍手と歓声。辺りを見渡せば"剣姫"だけでなく、俺にエールを送る人も沢山居た。中にはスプラウトの仲間達やギルドマスターも。立会人のアレスさんも、満足げな表情で拍手していた。
『──正直、此処までとは思っていなかった。何度もヒヤヒヤする瞬間があったし、次やったら今度は私が負けるかもしれないな。...それに何より...最後の炎を纏った拳、アレは凄かったぞ!何とかかわしたけど、当たったらどうなって居た事か!...あぁ勿論、実力は申し分無かったよ、むしろ此方からお願いしたいくらいだ!これからよろしく頼むよ、クロノ。』
...どうやら、"剣姫"も満足だったらしい。それと、最初の印象よりも固く無い奴だって事が何と無く分かった気がする。悔しいけど敗けは敗け。そう素直に認められる強さを、"剣姫"は持っていた。──その後、ギルドの貸し切りで行われた酒場の宴会に連れ込まれて、死ぬほど酒を呑まされた。俺も"剣姫"も未成年なのに、そんな言い訳は通用しなかった。というか"剣姫"の奴はかなりの呑兵衛らしくて、俺が酔い潰れる寸前まで元気にアレスさんと呑みまくっていたな。...そんなへんてこな出会いだが、これが俺の"相棒"になるレティシアとの、初めての出会いだった。
/『──っはぁッ!!っクロノ!今だッ!!』
「応ッ!!──パイル...バンカァァアアア!!」
...レティとペアを組むようになってから暫く経った。俺達は毎日のように森へ潜り、依頼をこなし、ドラゴンでさえも協力すれば屠る事が出来るまでになった。高い実力と...お互いに全力を出し合える"信頼関係"、が成せる技、だと思う。そう言えるくらいには、俺達二人は息が合う様になっていた。
『よしっ!流石だクロノっ!相変わらず"パイルバンカー"は凄い威力だな!私はまだ、あの技が止められた所を見たことが無いぞ?』
「まぁな、──でも、撃つ度に右手がこんな事になるんだ、この位の威力がなきゃ割に合わないぜ。」
そう、レティに出会う前から使っていたこの技には、右手に火傷を負うという代償がある。これだけはどんなに試行錯誤しても、威力を大きく落とさなければ改善される事がなかった。それでも、どんな敵でも当てれば貫ける様なアホらしい威力は、切り札としては申し分無く、格上の敵はほぼこの技で倒してきた様な気がする。
『ふふ、確かにそうだな。肩を貸そう。......すまないな、私が回復魔法を使えたら...。』
「...それを言ったら俺もだろ?気にしてないし、助け合うのが"ペア"ってもんさ。」
そして、この技には"パイルバンカー"という名前が付いた。考えたのはレティ。少し前にお互いの技を見せ合ったときに、勝手に付けられてしまった。勿論、他の技も。毎回放つ前に名前を叫ぶのはかなり恥ずかしいものがあるけど、言わないとレティが拗ねるから、仕方なく叫んでいる。レティは大人びているように見えて、何処か子供っぽいような、妙な拘りを持っている奴だって事に、一緒に過ごす内に気付けた。...でも、そんなこいつと過ごす日常が俺にはとても楽しくて、レティと過ごすようになってから、何処か薄暗かった世界に色がついたような気さえしていた。
/『...ふふ、私達も益々有名になった様な気がするな、街の皆も、私とクロノがペアを組んでいるのを認めたみたいだ。』
「そういえば...そうだな。最初はレティのファンみたいな人達に散々言われたっけ。」
『あぁ。でも、彼等も漸く気付いたようだ。クロノが私とペアを組むに値する冒険者で、そして私の相方を務められるのは、クロノ以外に居ないということを。ふふっ。』
俺達、"剣姫"と"灼尽"は、個人では評価されていたものの、俺は"剣姫"のペアになったことで、実は他の冒険者から妬みの視線を受けることも多かった。...けど、最近になって、そんな視線を感じることは殆ど無くなって、更に俺達二人を認めて"炎剣"なんてパーティー名を付けられる程になっていた。それ所か、街を二人で歩いていると『デートかい?仲が良いねぇ』なんてからかわれる事まであった。あれだけ"剣姫"に好意的な視線を向けていた男冒険者にそんな事を言われるという事は、彼等が"俺を認めた"事に変わり無くて、それも本当に嬉しかった。認められる事に、羨望の眼差しを受ける事に対する優越感に浸り過ぎてレティに注意される位には、嬉しかったな。
/──レティとペアを組んで3年が経っただろうか。俺は19歳、レティは20歳と、冒険者を続けている内にもう子供じゃ無くなって居た事に驚いてる。ユグドラシルに入団して、レティとペアを組んでからは一瞬で年月が過ぎていった気がする。一緒に魔物と戦って、買い物に付き合わされて、スイーツ巡りにも引っ張り回されたり、何度も何度も模擬戦をしたり。毎日が楽しかったからか、本当に一瞬だった。そして、明日がペアを組んでから丁度3年目。何かお祝いをしようか、なんて前々から思っていたんだが...──今日になって俺はとある心配事で頭が一杯で、それ所じゃあ無くなっていた。今日の朝から、レティの様子がおかしいんだ。何処かそっけなくて、近づくと然り気無く離れて、話し掛けようとすると適当な理由をつけて何処かへ行ってしまう。どう考えても避けられていた。色々考えたけど、思い当たる節なんて無いし、答えは出てこない。もしかして、俺とペアを組むのが嫌になったんじゃないか、なんてそんなネガティブな事しか考えられなくなってしまっていた。その後、昼前に話し掛けた時には、
『あぁ、今日は用事があるんだった。それじゃあな。』
とギルドを出ていってしまった。───あまり人としていけない事だとは分かってる、でも、確かめないと明日の事も考えられない。だから俺は、こっそりレティの後をつける事にした。
「.........っ、レティは...っ!...あ、彼処か...。」
流石は"剣姫"。人混みの中をかなりのスピードで進んでいく。今はなんとか人混みで誤魔化せているものの、少しでも人が少ない所に行けば、気配を感じたのか突然振り返ったりしてくる。だから此方はなるべく気配を消して進まなければならず、気を抜いたら見失ってしまう程だった。
「...あれ...あいつ...店に入ったぞ...?」
彼女が入っていったのは服屋。案外あいつは買い物好きで、そう珍しいことじゃない。...けど、今回アイツが入っていったのはどうみても...
「...男物の...服屋、だよな...?」
それもかなり高級な所。貴族御用達の、高級呉服屋だ。物によっては魔術によるエンチャントが掛かったものも売っているらしく、俺には金銭的にも雰囲気的にも入れるような場所じゃない。...いや、今はそんな事はどうでも良かった。問題なのは何故レティが、男物の服屋に入ったかだ。親への贈り物か...いや、まさか新しいペアへのプレゼントだろうか。...まさか...まさか...な。
/───あれから数時間が経った。まだレティは店から出てこない。流石のレティでもこんなに長く同じ店に居ることなんてそうそう無かった。...もしかして中で何かをしているのか?そう考えると、何故か胸がざわついた。──更に一時間。精神を張り巡らせるのも限界に近い。そろそろ日も暮れ始めて来たし、明らかにおかしい。...そろそろ店へ入って直接確かめようか、なんて思っていると
「──来た...!」
何やら綺麗に包装された大きめの箱を大切そうに両手で抱え、店から出てきたレティ。十中八九、衣服だろう。綺麗に包装されているのを見るに、プレゼント用。──誰にプレゼントするのか、何としても見定めなければならない。このまま、何の成果も得られず、帰るなんて選択肢は俺には無かった。
『...。......っ。』
昼よりは少なくなったものの、変わらず多い人混みの中を、周りを警戒しながら進んでいくレティ。大切そうに抱えた箱を見るに、よっぽど傷付かせたく無いんだろう。──何だろう、胸のざわめきが止まらない。着々と進んでいく彼女の後を追いかけていくと、ギルドとは違う方向へと向かっていく。どうやら、この先に渡す相手が居るらしい。自分の住んでいる借り屋もこの先だから、帰る手間も省けた。...そして、彼女は俺の借り屋の近くで立ち止まれば、何やら人気の無い路地へと入っていく。──ますます怪しい。ばれないようにこっそりと着いていき、物陰からそっと様子を伺った。
『──ントだ。...その、受け取ってくれ。──じゃ駄目か...それなら──』
何やら何度も何度も紙箱を差し出す練習している。毎回渡すポーズが違う辺り、一番良い渡し方を試行錯誤しているんだろう。...彼女のそんな姿を見るのは初めてだった。本当に、俺のペアじゃなくなってしまうのかもしれない。漠然と突き付けられた疑惑が、俺の胸を締め付けた。
/...数十分位だろうか。漸く練習を終えたのだろう。漸く此方へと歩き出したレティから隠れるように壁の裏に移動して、通り過ぎていった彼女を追うように路地裏を出る。...すると、俺の家の玄関の前で立ち止まっているレティが居た。ノックしようと手を出しては下げ、出しては下げ、と何度も逡巡している様子が目に入る。──俺はこっそりと、レティの背後から近付き、肩を叩いた。
『──ひゃあっ!?クっクク、クロノ...!?な、何でお前が此所に...っ!?』
「おわっ!?...い、いや...何か俺の家の前で何かしてるから...何か用かなって。」
声が裏返る程驚いたらしい。そんなレティの声は初めて聞いたかもしれない。肩を叩いた此方が驚いてしまった。なるべくボロを出さないよう、直ぐに立ち直って、問われた答えには一応無難な答えを返しておく。
『そ、そうか。...いや、待て...。......クロノ、まさかお前、昼からずっと私の事を...。』
「......──その...すまん...。...つい...気になって...。」
...図星。何とか誤魔化そうとはしたけど、半ば確信を得たような相手の視線にはまともな言い訳を返せそうになく、諦めて本当の事を言うことにした。
『はぁ...あの妙な気配はクロノだったのか...。......女性のプライベートを覗き見るのは、男としてちょっとどうかと思うぞ...?』
...何も言えなかった。これに関しては完全に俺が悪い。不機嫌そうに少し頬を膨らますレティを宥める為に、もう一度しっかりと謝っておこう。
「それは...悪かった...。でも、朝からレティがよそよそしいから、何かあったのかと思って...。もしかして、俺以外の人とパーティを組むのかもと思ったら、居ても立ってもいられなかったんだ...。」
そうやって、しっかりと自分の思っていたことを包み隠さず話したら、大きな溜め息をレティに吐かれた。
『...クロノ。一応言っておくが、あれから私は一度たりともクロノ以外とパーティを組んだ事はないし、そう思ったことすらない。私の相棒を務められるのは君しか居ないんだぞ。他の人なんて此方から願い下げだ。次そんな事を言ったら、怒るからな?』
...俺の、杞憂だったみたいだ。今思えば、あの時の俺はかなり焦っていた気がする。...一人であんなに空回りしていたと思うと、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
『...ところでクロノ。君、明日が何の日か知っているか?』
──唐突。だけどそれは今日の朝から、ずっと考えて居たことだ。大して悩む必要もなく、即座に答える事が出来た。
「俺とレティがペアを組んで、丁度3年目、だろ?」
『...覚えているのなら話が早い。...その、受けとれ。...思えば一年目も二年目も、何も祝うことが出来なかったから、今回はしっかりと祝おうと、ずっと決めていたんだ。しっかりとこれからも役立つものを選んだつもりだ。大切にしてくれ。......あと、今回のストーカーの件は...私を心配してくれていた事だし...水に流す事にする。...それに...しっかりと明日を覚えていてくれたし...。』
...そういう事だったのか。俺が祝おうとしていたのに、レティに先を越される形になってしまった。少し悔しいけど...レティもこの日をしっかりと意識してくれていた事が凄く嬉しい。あれだけ長い時間店に居たのも、プレゼントをしっかりと悩んでいてくれていたから。そう思えば、待ち時間だって全くといって良いほど苦にはならなかった。...あれだけ練習していたのに、渡し方は片手で相手へ押し付けるように渡すような不器用なもの。視線も此方には合わせてくれないし、声も小さい。彼女なりの照れ隠しのつもりなのだろう。俺が突然話し掛けたから、こんな事になってしまったんだろうか。
「ありがとう。この中に何が入っていても、絶対に大切にする。...あんなに練習してたのに、渡し方は普通なんだな。」
『ああ、そうしてくれ。中身なら、今すぐ見ても良いんだぞ...って...なっ...!?それも、全部...っ!?──~~っ!!さっきの台詞は無しだ!それを全部忘れるまで許さないからな!クロノっ!』
つい、口に出してしまった。みるみる内に顔を赤くしていくレティ。まるで茹で蛸のように耳まで赤くしてしまった。よっぽど恥ずかしかったのだろう。...ふふ。ぷりぷり怒るレティを宥めながら、綺麗な包装を解いていく。黒色の立派な紙箱だ。中を見るとそこには...
「...これは...ジャケット...か?...それにズボンも。...かなり高かったんじゃないか?あの店は高いものしか扱っていなかった気がするぞ...。」
立派な赤色のジャケットと長ズボンが入っていた。生地も良いもので出来ていそうで、見るからに高級なものだった。...けど、俺の予想はレティの斜め上を行く返答により裏切られる事になる。
『まぁ...確かに高かったな。3年間の私の感謝の気持ちだと思って受け取ってくれると嬉しい。一応、魔力を吸収して服を自動で修復する機能と、炎属性の強化エンチャントが施されている。...しっかりしたのは高くてとてもじゃないが手が出なくて、どれも微弱なエンチャントだが、許してくれ。』
まさか、エンチャント品だとは思わなかった。安いものでも十万は下らない筈。早く着てみてくれ、とレティがせがんでくるから、仕方なくその場でジャケットとズボンを履く。...サイズはぴったりだった。いつの間に調べたのだろうか。高級品だから汚さないように、なんて思いながら、レティを見ると、何故か此方を見て固まっている。不思議に思ったので声を掛ける事にした。
「...レティ?どうした?...その...似合ってる、か...?」
その言葉にはっと目を見開くレティ。漸く意識が戻ったらしい彼女は、此方をキラキラとした目で見て、とびきりの笑顔と共に、胸の前で両拳を握って見せた。
『ああ、凄く似合っているぞ!格好良いとも!...ふふ、やはり私の目に狂いは無かったようだな。これ以外に無いとは思っていたんだ。』
まるで自分のことのように嬉しさを前面に出しながら、俺の周りを回って、色んな角度から確認してくるレティ。こんなに正面から褒められると少し照れてしまうな。──そんな、思わぬサプライズがあった記念日前夜を二人で酒を呑みながら過ごし...肝心の記念日当日は、二人とも布団で二日酔いに苦しむことになってしまった。それでも、今までで一番幸せな時間を過ごしたと思う。凄く充実した2日間だった。
/記念すべきあの日から数ヵ月が経った。プレゼントのジャケットは毎日着ている。レティ曰く、
『腕捲りした方が格好いい!』
らしいから、腕捲りをすることにした。一週間後にフレイムドラゴンの番の討伐クエストを控えて、休暇を取り、のんびりと過ごすことにした。
/やってきた、フレイムドラゴンのクエストの当日。ギルドメンバー達に挨拶をしてから、オプスキュリテへと入った。今回のクエスト、フレイムドラゴンの討伐は、単体ならはっきり言って、俺達の敵ではない。...だが、番となると狂暴性が増し、更に繁殖期と重ねれば炎のブレスの威力も格段に上がり、全体的に強化される特徴があった。そして、今回のクエストはまさしくそれに当たる、番の討伐だった。気を抜ける様な相手ではないが、それでも俺達二人なら、油断しなければ勝てる難易度とは聞いていたから、割と気持ち的には軽いものだ。
『なぁ、このクエストが終わったら、久しぶりに模擬戦をしないか?前回はクロノに負けてしまったからな。今回は必ず勝って見せるぞ!』
「...あのな、そういうのは縁起が良くなくて、死ぬ前に言う言葉らしいぞ。」
なんて、そんな雑談をしながら進んでいける程には緊張感は無かった。襲ってくる魔物達ははっきりいって敵ではない、そのままどんどんと歩を進め、フレイムドラゴンの番が巣を作っているという洞窟の前へとやって来た。──しかし、目の前に広がっていた光景は完全に予想外、目を疑うような景色が俺達を出迎えた。
「な、なんだ...これ...。」
『ふむ...。...恐らく...フレイムドラゴンの亡骸だな、番揃って殺されたようだ...。...だが、この傷...人間技では...。』
真っ赤な鱗は既に赤黒く変色してしまった、巨大なドラゴン"だった"もの。それも2頭分の死体が目の前に転がっていた。地面は激しく抉れ、ドラゴンの体は大きな荒々しい傷が残り、一体は首を両断されていた。明らかに人間がやったものではない。...だとしたら、一体どいつが?フレイムドラゴンの番を狩れる魔物など、そうそう居ないだろう。そう思案に耽ていると、隣のレティが口元に人差し指を当て、『静かにしろ』のジェスチャーをした。
『...しっ、何か...聞こえる...。』
その言葉に、静かに耳を澄ます。...すると確かに、鈍い、それでいて重い何かの足音が聞こえた気がした。距離はだんだんと近くなっているのか、地面が揺れるのを感じ始めていた。ある程度の距離までやって来ると、俺とレティは同時にある方向を向く。
『...洞窟...か...。』
「らしいな...。」
どうやら、足音の主はフレイムドラゴンの巣だった洞窟を占拠しているらしい。警戒しながら洞窟をじっ、と見つめていると、暗闇の中に紅い双眸が輝いた。──直後、洞窟の入り口が弾け飛ぶ。
『くっ...!!一体何だ...っ!』
「くそ...っ!!」
激しい爆風に晒され、両手をクロスして飛んでくる石から体を守る。暫くして漸く砂埃が収まってくると、眼前に聳え立っていたのは、黒く、大きな..."ドラゴン"だった。
『...なっ...!?なんて大きさだ...、フレイムドラゴンの3倍はあるぞ...っ!』
「ブラックドラゴン...ダークネスドラゴンでも無いな...、大きさが違いすぎる...。...こいつは...一体...。」 光を吸い込むような漆黒の鱗。炎のように輝く深紅の双眸。そして他のドラゴンが子供に見える程の巨体を誇る"竜"が、俺達の前に立ちはだかっていた。
[──グギャアアアア"ア"ア"ッ!!!]
耳をつんざく様な激しい咆哮。直後、ドラゴンが鎌首をもたげ──
『っクロノ!ブレスが来るぞ!!』
「応ッ!!」
レティの合図に合わせ、左右に別れて飛び込むように回避する。すると、先程まで居た場所を黒い炎が通り抜け...土がガラス化する程の熱量で地面を焼き尽くし、直撃した大きな小山の様な岩を木っ端微塵に粉砕していた。
『なんて...威力だ...っ...!クソッ!!"蒼覇...冥招斬"!!』
「ふざけやがって...!"ダイナブラッシュ"!!...くぅっ...!」
"剣姫"の強烈な一撃は鱗に阻まれ、俺の攻撃は尻尾の一撃による風圧で阻まれた。何とか風圧を踏ん張ることで耐えきれば、レティに視線を向け
「レティ!"パイルバンカー"で仕留めて見せる!!時間を稼いでくれないかッ!!」
『分かった!私に任せておけ!──はぁあッ!!』
叫ぶと、レティは大きな掛け声と共にドラゴンへと斬り掛かっていった。俺の準備が出来るまでの間、時間を稼いでくれるらしい。
「...っ...ふぅ......。...コォォォ...」
右手へと魔力が集まっていく。ボッ!と音を立て、右手に炎が宿る。ぐっ、と拳を強く握り、ありったけの魔力を絞り出そうと再び集中する。
「っく...!!クロノ!まだなのかっ!あまり長くはもたない...ぞ...っ!」
レティはドラゴンの攻撃を弾き、いなし、かわすので精一杯な様だ。それでも、一人であの攻撃を捌き切る腕に感嘆の声が漏れる。
「はぁぁあっ...!...よし!レティ!!行くぞ──!!"リミットブレイズ"ッ!!」
直後、体全体からも炎が噴き出し、残像を残すほどのスピードで竜へと近づき
『よしクロノ!決めてやれぇえッ!!』
「パイル...バンカァァァァア"ア"ア"ア"ア"!!」
首元を目掛けて炎を纏った拳を叩き込む。今までどんな敵でも一撃で葬って来た俺の"切り札"。今回は奥の手の"リミットブレイズ"まで使って、スピードも乗せている。体への負担はただのパイルバンカーの比じゃないが、威力は段違い。どんな敵でも貫く事が出来る筈だった。
「...っな...に...ッ!?──が、はッ...!!」
止められた。少しだけ鱗を傷付けることは出来た、が。初めて貫くことが出来なかった。その事実が、俺の"必殺"が敗れた事実が、体の傷よりも深く、俺の心に突き刺さった。そのままドラゴンの尻尾に弾き飛ばされ、近くの岩に叩きつけられる。
『っクロノ!?大丈夫かっ!?』
駆け寄ってくる"相棒"。心配げな視線で俺を見下ろしている。...くそ...。アイツには勝てない。正面から戦って味わった初めての"敗北"と技の副作用、そして先程の攻撃による打撲が体を蝕んでいて、何とか体を起こすも、立ち上がることがやっとだった。
「はぁ...はぁ...レ、ティ...。...此所は一度...帰ろう...。俺達じゃコイツには、勝てない...。」
背後では激しい咆哮と共に此方を睨むドラゴンの姿。下手に首に傷を付けたからか、当初より狂暴性が増している様だ。この傷では、逃げられるかどうかも、怪しいものだった。
『...──クロノ。此所は私に任せて先に行け。』
...は?コイツは何を馬鹿なことを言っている?一瞬、理解が出来なかった。その後、遅れて感情が溢れ出して来た。
「何言ってんだ!?置いていける訳無いだろ!!早く行くぞッ!」
そう言って俺は手を差し伸べる。けれど、返ってきたのは明確な"拒絶"だった。
『此所で私達が二人一緒に逃げれば、追い付かれて皆殺しになるだけだ。分かってないのは...君だ!!良いから行けッ!!』
「ふざけるな!!行ける訳無いだろ!!お前を置いていくなら俺は此所で...」
『馬鹿なことを言うな!!...良いかクロノ、君が先に帰って救援を呼べば良いだけの話だ。...私を誰だと思ってる?あの"剣姫"だぞ?倒せなくても、遅れを取る事はない。必死で逃げ惑うくらいは出来る。』
...そう言っても、俺の足は動かなかった。確かに、俺みたいに力押しじゃなくて、技術もあるレティなら生き残ることは出来るかもしれない。...でも、もし、何かの間違いなんて事があったら。そう考えると、どうしても置いていくことは出来なかった。
「けど...」
[ゴガアアアアアアアアアア!!!]
言い掛けた俺の言葉を消し飛ばすように咆哮が響き渡る。ドラゴンが此方へと迫ってきていた。
『行け!クロノ!!二人が生き残るにはそれしか無い!!頼む!!...さぁ、早く行けクロノぉぉおッ!!』
レティの叫びと共に俺は森の方へと強く蹴り飛ばされた。深い森の中に吹き飛ばされた俺は、一度だけ振り返り、無我夢中で走った。サントルヴィルを目指して、邪魔な魔物は止まらず殴り、踏み殺し、流れる涙も拭かず、休むことなく走った。
/...一時間も掛けずに、俺はサントルヴィルに辿り着いた。一心不乱に走る俺を見て、町の人々は道を開けてくれる。そのまま俺は、ギルドへと帰り、ギルドマスターのアレスさんに今の状況を話した。
『何...ッ!?レティシアさんが...!?...分かった、今すぐ救出隊を編成する。君は此所で休んでいると良い。』
ふざけるな。...休んでなんか...居られない。...レティは...助けが...俺が来るのを待っているんだ!!
「...嫌...です...!行きます...!行かせてください...!」
『しかし...その傷では...。...っ...分かった、許可しよう。だが、一刻を争う事態だ。遅れる様なら容赦なく置いていく。良いな?』
遅れるつもりなんて、毛頭無い。俺は、必ずレティを助けに行くんだ。...迅速に編成された救出隊は、アレスさんを筆頭にした強力な戦闘部隊。そして数人のハイレベルなら治癒術師達。足が速いメンバーを集め、俺達はレティの元へと向かった。激痛を訴える体を無理矢理動かし、救出隊と共に走る。──待っていてくれ、レティ...!!
/...俺達は、レティが戦っている筈の、フレイムドラゴンの巣の近くまでやって来ていた。けど、ドラゴンの咆哮どころか、地響き1つ感じることはなかった。それが示すのは、既に戦闘が行われていないと言うこと。胸の中は不安と心配で一杯で、他の事を考えることも出来なかった。──巣へと辿り着いた。痺れて倒れそうになる体に鞭打って立ち止まれば、辺りを見渡す。所々が燃えていたり、地面が溶けていたり、岩が砕けていたりと激しい戦闘が行われていた痕跡はあるが、ドラゴンの姿は何処にもなかった。
「はぁ...はぁ...レティは...」
俺は相棒の姿を探す。遠くの岩影に目を凝らせば、岩に上半身を預けるようにして倒れている人影が目に入った。くすんでいるが紛れもない金髪。──"レティ"だった。
「っレティ!!助けに来た......ぞ......」
『──クロ......ノ...?...少し...遅い...ぞ...?...っごほ...。』
──なん、で...こんな...。何か喋ろうとしたけど、空気が漏れるだけで言葉が出なかった。愕然としているのは俺だけじゃなくてアレスさん達もらしい。同様の声が聞こえる。...レティシアの左足は付け根から無くなっており、右手は炎のブレスのせいか炭化して、腕とは言えないものに。身体中に大小様々な傷と火傷を負ったレティは...生きているのが不思議な程に...ぼろぼろだった。
「っレ...レティ...!?クソ...っ!誰か...回復魔術を!!お願いだっ!レティを助けてくれぇええええええ!!!」
力の限り叫ぶ。早くしないと、レティが死んでしまう!!初めて突き付けられた身近な人の死という事実が、俺の精神を焦燥させる。俺の言葉に我に返った治癒術師達がレティの周りを囲み、回復魔術を掛けていく。...祈ることしかできない俺の不甲斐なさに、悔しくて涙が止まらない。
『っ...!傷が...治りません...っ!回復魔術は掛けている筈なのに...。...ダメージが大きすぎます!』
...は?...傷が治らない...?...ふざけやがって...!!そう思うより早く、俺は手が出ていて、気付けば治癒術師の頬を思いきり殴っていた。
「ッふざけるなぁ!!レティに何かあったら俺はお前らを...っ!!...離せ!離してくださいアレスさ...ッう"っ...ぐ...」
アレスさんに腕を掴まれた。振り払って抵抗しようとしたら、思いきり腹を殴られた。
『お前こそふざけるなよ、クロノ。元はと言えば全て君のせいだ。...他人に当たるのも大概にしろ。』
いつもの優しいアレスさんからは想像もできないような、底冷えする様な声。腹を鈍痛が襲う。...けど、その痛みがやっと、俺にまともな判断をさせてくれた。
「...すみません...。」
漸くアレスさんは掴んだ手を離してくれた。
/...暫く治癒術師達は回復を続けていた。けど、レティの体は淡く発光するだけで、回復する兆しは全く無かった。...その内、一人の治癒術師が魔力切れで倒れた。他の治癒術師も、限界が近いのか、苦しそうにしている。──もう、駄目なのか。そんな感情が心を過った時、微かな声が聞こえた。
『...も...う、良いから...──ロノ...に...。』
レティが何かを喋った。俺には、"クロノ"と聞こえた気がした。俺がレティに近寄って体を抱き起こすと、ふらり、と残りの治癒術師も糸が切れたように倒れていく。どうやら、既に気力だけで立っていたみたいだ。
「っレティ、...なんだ...?...大丈夫...話せるのか...?」
上半身を抱き抱え、レティの顔を覗き込む。既に瞳からは光が消えかけていた。
『...あぁ...まぁ...な...。...クロ、ノ...今まで凄く...楽しかったよ。...初めて会った日から...ずっと...あんなに楽しい日々は...初めてだった...』
──なんで、なんでそんな悲しいことを言うんだ。それじゃあ...まるで...
「お前が...死んじゃうみたいじゃないか...そんな事...言わないでくれ...!!──あぁ...俺もだ、レティと過ごしてから、毎日に色がついたみたいで...楽しかった...もしレティが居なかったら...居なくなったら...俺は...!!」
気付けばレティを抱き締めていた。もう、体は少し冷たかったけど、レティの温もりを感じることが出来た。一瞬、耳元で驚いたような声が聞こえたけど、ゆっくりと、残った左手で背中を擦ってくれた。
『...ふふ...男が泣くもものじゃないぞ...。私まで、泣けてきちゃうじゃないか。最後まで、君の前では笑って居たかったのに。...でも...最後は...君を守れて...年上らしく...出来た...かな...。』
涙が止まらない。レティが、少し離れて、俺の頬に片手を添えてくる。目線が合った。...もう、瞳は薄目を開けているような、そんな感じだった。お互い、涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。
「──レティ...俺は...俺は...、...ごめ...」
俺の口に弱く人差し指が当てられた。はっとしてレティを見ると、淡い笑みで此方を見ている。
『それ以上...言わないでくれ。...私は君を守れて満足してるのに...それを言われちゃ...みじめになって...しまう...よ。......最後に...1つ...。頑張って...生きるんだぞ、すぐに来たら...許さないからな...!......──今まで...ありがとう、クロノ。......ん──』
口に感じた、少し柔らかい感触。...初めての...キス、だった。...そして、レティの体から力が抜けていく。左手が地に落ちる。
「レティ...レティ...!!!──う、...ああああああああああ"あ"あ"あ"あ"!!!!レティシアぁぁああアアア──!!」
泣いた。俺はレティを抱いてただ、泣き叫んだ。いつまで泣いていたかも分からない。...でも、俺が覚えている間は、ずっと泣き続けていたと思う───
/「......っ。」
...見知らぬ...天井だ。何となく、見覚えはあるが、少なくとも、俺が長年過ごした借り屋では無い...。
『起きたかい、クロノくん。...何となく、君が何を言いたいのかは分かるよ。──"あの"後、君はそのまま倒れてしまって、私達が此処まで運んできたんだ。』
...近くの椅子に座っていたアレスさんが、声を掛けて来た。辺りを見渡せば、此所がギルドの個室だということが分かる。どうやら、3日も意識を失っていて、その間ギルドメンバーが交代制で見守ってくれていたらしい。
「...すみ...ませ...ん。...その...アイツは...レティ...は...。」
鉛のように重い体を起こして、はっきりとしない意識の中、アレスさんへと問う。微かな希望を抱いて。
『レティシアさんは...亡くなってしまったよ。...昨日、火葬を終えた所さ...。町の皆も、一緒に泣いてくれた。』
...そう...だよな。確かに、あの時、俺の腕の中で死んでいた...。...最期の瞬間まで、一緒に居れなかったことが悔しい。...でも、俺が目覚めるまで待っていたら、彼女の体はどんどん腐敗してしまっていただろう。仕方が無いことだった。
「......ちょっと...外の空気を吸って...来ます...」
レティに、会いたい。ただそれだけを思って重たい体を無理矢理に動かし、ベッドから出ようとしたが、アレスさんに止められた。
『...君は魔力欠乏症と体の傷、能力の副作用で、君が思っている以上に体がボロボロだ。...それに、精神的にも追いやられている。──だから、外に出るのは"おすすめ"しないよ。...それじゃあ...、ゆっくりと休むといい。』
そう言い残して、アレスさんはさっさと部屋を出ていってしまった。アレスさんに言われた事をもう一度考えてみたが...確かに体は重い。でも動けないほどじゃない。今はそれよりも...レティの墓の前に行って...もう一度"会い"たかった。転がり落ちるようにベッドを出れば、壁に手を当て、重い体を支えながら、階段を降り...ギルドメンバーが思い思いに過ごすロビーへと顔を出した。
『──クロノ...!?』
『──おい、今は...』
『......今外は...止めるべき...か?』
『...ックソ!!離せ!俺はアイツを殴らなきゃ気が...!!』
顔を出した俺に視線が集まる。途端にざわめき出すギルドメンバー達。...何処か様子がおかしい。...確かに...ギルドメンバーが...レティが死んでしまったんだ、おかしくなるのも...当たり前だろう。そう思い、何やら俺によそよそしくもあるギルドメンバーの間を抜け、ギルドの扉を開け──
/──『てめぇ!灼尽!!よくも剣姫を──!!』
『レティシアさんを見捨ててのこのこ帰ってきやがって!!お前も死んでれば良かったんだよ!!』
『剣姫さんはな、お前と違ってすげぇ良い人だったんだぞ!この人殺しが!!』
『──!!』
『───』
...何だ...この光景は...。ギルドを出た俺を出迎えたのは、ギルドの入り口周りを囲んでいた老若男女問わない沢山の人々だった。その中には、顔見知りの冒険者も沢山居て、そいつら全員が──俺に敵意を向けていた。"俺の気も知らないで"。そういうのは容易い。けど、彼らの言っている事は全て本当で、反論の余地がなかった。俺は近くにいた"スプラウト"時代の冒険者仲間へと近づき、声を掛けた
「...なあ...レティ...いや、"剣姫"の墓を知らない...う"っ...」
『ッざけんなよクロノ!!何がレティだ...てめぇにあの人をそう呼ぶ資格なんざ──ねぇんだよオラァッ!!』
思いきり頬を殴られた。頬を押さえて踞る俺に追撃の蹴りが飛んでくる。──あんなに仲の良かった友人に暴力を振るわれた。その事に唖然としている俺に、辺りから怒号と罵倒、そして石などが飛んでくる。...その場に居れなくなり、逃げるようにギルドへと戻った俺の前に、数十分前に会った人が立っていた。
『...クロノくん。...私は言った筈だ。"おすすめ"しないと。......今は部屋で休んでいなさい。』
...そう...だった...のか。アレスさんは...この事を知っていて...
「...分かり...ました...」
もう...何かを言う気力も無くて...そのまま俺は、宛がわれた自分の部屋と戻った。
──『...団長。最初にしっかりと止めておけば、こうはならなかったんじゃないですか?...アイツはもう、立ち直れないと思いますよ。』
『...いつかは、こうなっていたさ。避けられないのなら、早めに気づかせておくべきだと私は思った。』
『...そういう、モンすかね。街を歩くのもこれからは難しそうっすけど。』
『......。』
/あれから、一週間が経った。あれ以来、部屋の外には出ていない。たまに食事が受付嬢やギルドメンバーによって運ばれてくるが、中々喉を通ることが無かった。水で流し込んで無理矢理飲み込むことが多い。俺の顔を見ていく受付嬢は、俺と視線が合った瞬間、びくんと体を強張らせたりせたりしていて、気になって鏡を見たが、目付きが悪く、自分でも少しやつれている様な気がした。
/更に一週間。...もうすぐ、俺のなけなしの貯金も、食事代で底をつく。...そろそろ、依頼を受けなければならない。人目のつかない道を選んで森に行けば、殆ど人に会わず依頼をこなすことも可能だろう。そう思い、二週間ぶりに俺は一階へと降りた。...幸い、他のメンバーは居らず、居るのは受付嬢だけだ。掲示板の前に立ち、適当にオークの討伐クエストを手に取れば、受付嬢へと渡す。
「...これを...。」
『──っ、えっと...その...。...クロノさんは...』
何か言い辛そうに視線を揺らしながら、受付嬢は何かを喋ろうとしている。──こいつまで、俺を敵視しているのか。そう思うと、頭に少し血が上るのが分かった。
「...良いからクエストを──」
『いい。...私から話そう。』
受付嬢の肩に手を置き、横から現れたのは...ギルドマスター、アレスさんだった。どういう事なのか、理解が及ばない。
「...何ですか?アレスさん。...俺はただ...依頼を...」
『クロノくん。君は昨日を以て、ユグドラシルから追放された。よって、君は此所ではクエストを受けることは出来ない。』
...え?...俺が...、追放...?...どういう...事、なんだ...
「...ふ、ふざけないで下さいよ...何で俺がギルドを──」
『...あまり言いたくは無いのだがな...君が聞きたいのなら、言おう。......君は、ユグドラシルの大切なメンバー、"剣姫"レティシアを"殺した"。だから君をギルドマスター権限で追放した、という事だ。君には、このギルドに居る資格が無いからな。』
...あんまり、じゃないか。アレスさんは、...この人だけは、俺の味方だと思っていたのに。あの時の状況を一番知っているのはこの人だ。...なのに...!こいつは...っ!!そう思ったときには、既に体が動いていた。
「──こ...の...!!...っ、こんなクソみたいなマスターのギルド、こっちから願い下げだ!!二度と来るかよこんな所ッ!!!」
『ああ。私としても、手間が省けて助かる。出口はあっちだぞ。"仲間殺し"。』
「──ッ!!!」
ムキになって、俺はギルドを飛び出した。辺りから聞こえる怒号を無視して、俺が暮らしている借り屋へと走った。けど、そこでも俺は"拒絶"された。
「...な...っ!?...クソっ...どいつもこいつも!!」
俺の住んでいた部屋は、既に他の住人が住んでいた。どうやら、着ていたこの服、レティからのプレゼント以外の私物は全て処分しやがったらしい。遂に、帰る場所すら無くなっちまった。クソ...ッ!ふざけやがって...!!
──『...団長、ホントに良かったんですか。...もう、アイツとは仲直りできませんし、アイツも生きていくのは難しいと思いますよ。...このギルド以外に、彼を受け入れてくれるギルドなんて無いんスから。』
『...仕方...無かったんだ。...クロノを保護したままだと...民衆の怒りの矛先が"ユグドラシル"全体に向くかも知れなかった。...他のギルドメンバーと、彼一人を天秤に掛けた時...私は...ギルドマスターとして、他のギルドメンバーを守る...その選択を取らなければいけない...。...それが...責任というものだ...』
『......そうっスか。...ま、当然の事ですよね。...強く当たったのも、アイツが心残り無く行けるからって知ってますよ。あんま、根を詰めすぎないで下さいね。...団長の選択は...間違ってなんか無いッスから。』
『...............すまない...すまない...クロノくん......本当に...すまなかった...』
/あれから、借り屋や宿屋を巡ったが、どこも俺を泊めてはくれず、野宿の道具を買う為に店を訪れれば、門前払いされ。俺は、路地裏の闇市でテントをふざけた値段で買わざるを得なくなってしまった。
「...畜生...。」
そんな呟きが数分起きに口から出てしまう。あんなにちやほやされていた俺が、たった2週間で、人目を忍んで路地裏を歩くことになるなんて思わなかった。...そして、頼れる"相棒"も失ってしまった。何度も彼女に頼ろうとしては、レティが居ないことに気づく、という事を繰り返す程には、今まで彼女に頼りきりだったのだ。悔しさと孤独感で胸が一杯だった。
/路地裏にテントを張って眠った翌日。俺は心もとない金の為、生きるという"約束"の為、依頼をこなすことが出来るギルドを探した。...若干、分かってはいたけど、俺を受け入れてくれるギルドなんて、ある筈がなかった。"二つ名持ち"だって事も、ユグドラシルに所属していた経歴も、俺の悪評と天秤に掛けられれば、一瞬の釣り合いも無い。その"二つ名"も今では禁句らしく、俺は"仲間殺し"と呼ばれているらしかった。...正直、ぴったりな名前だと思った。...早々に俺はギルドに入ることを諦めて、サントルヴィルを出る事にした。行く当ては無いが、この街に居るよりは、生きやすいだろう。冒険者だからといって、"冒険者"の仕事をしなければいけないという訳じゃない。他の国で、他の仕事をするのも手の1つだ...。
/...あれから...1年...いや、2年が過ぎた。俺の年齢は...昨日、22歳になったばかりだ。祝ってくれる人も居なかったし、半分忘れていた。...サントルヴィルを出てから、俺は、エルフやスロープ達、他種族の国を回ったり、母国のユーマンの国に行ったり、...勿論サントルヴィルに戻ったり、色々な国をさ迷ってきた。親の商店や、俺に武術を教えた事になっているユリ姉に迷惑は掛けたくなかったから、故郷のメガエラには行っていない。他の国はサントルヴィルに比べて、会った人全員から暴力を受けたりすることは無くなったけど、やっぱり俺の事を知っている人は沢山居て、侮蔑の視線に晒されることは日常茶飯事だった。でも、サントルヴィルよりはマシ、だ。最近は毎日日払いの仕事をして、何とか生計を立てているけど、1つ気付いたことがあった。...俺は、戦うこと以外に、得意なことがほぼ何一つ無かったんだ。...どんな仕事をしても、人並みに以下にしか出来ないし、失敗ばかり。かといって、依頼をこなそうにも、入るギルドがない。...俺が依頼を受けるには、ギルドの保証が無い個人依頼を受けるしか無かった。ギルドの保証が無いということは、報酬を貰える保証が無いということで、依頼を達成しても報酬をぼったくられたり、貰えないことも少なくなかった。...それでも、俺がまともにこなせる仕事は、これしか無い。これしか、してこなかったんだから。...そして、今日も道端でテントを張り、目を閉じる。夢の中で、"彼女"に会える事を祈って──
/久しぶりに、サントルヴィルにやって来た。10年たっても俺の悪評は変わらず、侮蔑の視線もまた、変わらず突き刺さる。──ほら、また石が飛んできた。慣れたもので、路地裏へと早足で逃げ込む。もう、表通りよりも路地裏を歩くことが多くなって、サントルヴィルの路地裏の事はほぼ知り尽くしていたし、どんな建物があるのかもほぼ覚えていた。──けど、今目の前にある建物は、見たことが無いものだった。...少なくとも、数年前には無かったものだ。しかも、その扉の横には看板。
「...誰でも...歓迎...。...まさか。」
失笑ものだ。何度、その言葉に騙されたことか。そう、そこにあったのは"ギルドホーム"だった。...今まで俺は、言葉に惹かれて一歩踏み入れた瞬間、"犯罪者はお断り"だとか、"悪人以外"だとか、そんな理由で追い出されてきた。...今回もその類いだろう、そう思って引き返そうと思った。けど...
「......今回...だけ...。...駄目元だ...。」
結局足は動かず、ドアノブを握ろうとする手だけがゆっくりと動いた。
「...こんにちは...。...ギルドに...入団したい...のですが...」
『ふぅん...何々...え?入団希望者!?』
何やら下を向いて書き物をしていた男が、はっ、と顔を上げた。そして俺の顔を見て、表情を曇らせる。──やっぱりダメか。そう思って、帰ろう、と思った直後、
『──ははぁん、そういう事ね。"仲間殺し"くん。...今まで、どこのギルドにも入団出来なかったんだろう?けど、ここは違う!俺達、悠遠の樹旅団は、君、"クロノ・クロスフェイドを歓迎する!』
ぱぁっ、と笑顔で両手を広げて来た。一瞬、俺を騙そうとしているのかと思った。10年間ずっと断られてきたから、嘘だった時に落ち込まないよう、頭が勝手に最悪の事態を考えていたみたいだ。...けど、そんな俺の疑いとは裏腹に、とんとん拍子に入団手続きは進んでいき、本当に、入団してしまった。...他のギルドメンバーとも、居た人とは挨拶を交わした。流石に俺を警戒している人だらけだったが、慣れているから何とも思わなかった。それよりも、上手く会話出来なかった事に驚いた。10年間、人と関わる機会が少なかったから、話すことすら苦手になってしまったらしい。鏡と向き合って、笑顔も出来ていない事に気づいた。...本当に、俺に出来ることは戦うことだけになってしまっていた。
/──翌日。俺はギルドの寮で目を覚ました。寮を進められて、久しぶりにベッドで寝ることが出来た。最初に俺を迎えてくれた彼──ギルドマスターは、俺は毎日寮を使うわけでは無いのに、快く寮を使うことを許してくれた。それ所か、部屋の内装の変更もして良いらしい。...必要最低限の家具以外、殆ど変えてはいないけど。...俺は、起きてすぐ、枕元に置いてあった薄い本を開いた。ギルドマスターに無理を言って借りてきたもので、このギルド、"悠遠の樹旅団"のメンバーの情報が乗った本だ。
「...あんまり...メンバーは多くないよな...。」
"ユグドラシル"と比較するのがおかしいのだが、お世辞にもメンバーは多い、とは言えなかった。でも、この本を見るに、かなり個性的なメンバーが居る事が分かった。俺と同じ...訳ありのメンバーも居るようだ。...お世話になるからには、"仲間"の事はしっかりと覚えておかなくてはならない。二度と仲間を失わない為にも、ある程度の信頼は必要で、その為にまず、相手の事を知ることから始めようと、昨日の夜から努力していたのだ。...どうやら、途中で寝てしまったみたいだが。──今日も、メンバーの特徴を覚える為に時間を使い、気付けば、ギルドの一階に顔を出すのが、昼過ぎになってしまっていた。
/──新しい、仲間。これは俺への最後のチャンスでもあった。今度は...次は必ず、仲間を守り抜く。どんな事があっても、逃げない。そう心に決めて、10年前と同じように、仲間と共に、森へと踏み出した──
「...お前は...必ず...守り抜いて見せる。...大切な、仲間...だから。」

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[14] 【五番目の種族:トレント】

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月14日(月)22時38分9秒 sp1-75-7-56.msc.spmode.ne.jp  通報   返信・引用

【トレント - Treant】

「森の主」。畏怖、或いは尊敬を込めてそう呼ばれる彼らは、つい最近まで存在を知られていなかった五番目の種族。
何故?それは彼らがオプスキュリテの奥深く――近頃まで誰も到達できずにいた領域で、静かに暮らしていたために他なりません。
いずれの種族にもその種族のみが住む「母国」が存在しますが、彼らのそれは間違いなく「オプスキュリテ」でしょう。

そんな彼らが扱うのは"森の力"。
魔力とも違うその力は、母なる森、父なる大地に力を貸してもらう事で、木の根を手足のように動かしたり、湖の水から雲を作って雨を降らせたり、他にも様々な破壊力の高い攻撃を繰り出すことが出来るというもの。
あくまでも"森"に協力してもらい実現している力なのでオプスキュリテ外ではほぼ使えませんし、魔力と同じく人によって使用限度が存在するようですが、少なくとも森の内部では非常に頼れる存在です。

彼らの体には植物の要素――たとえば頭に花が咲いていたり、足に蔦が巻いていたり――が存在しており、体のつくりは人間よりも植物、樹木のそれに近いのではないか、と考えられています。
それ故か物理攻撃に対する耐久力はとても高く、魔力を伴わない攻撃であれば他の種族よりも圧倒的に、魔力を伴うものであっても常人と比較すれば長い間耐えることが出来ます。
けれども悲しいことに、火に関する攻撃には何の耐久性も持ちません。

森を愛し森に愛される彼らがどうしてこのギルドへ加入しようと思ったのか、そもそもなぜ"母なる森"を離れサントルヴィルへ訪れたのかは、彼らの詳細な生態同様謎に包まれています…。



[13] (無題)

投稿者: Q&A* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時13分45秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

◆Q1:イストワールでは何歳から成人なの?
 A:ユーマン、ネイン、スロープは20歳、エルフは200歳。お酒や煙草を楽しめるようになるのもその歳からです。
◆Q2:五つの国があるって書いてるけど、言葉は一緒?
 A:五か国全て同言語です(「イスト語」と呼ばれます)。
◆Q3:お金の設定はあるけど、物価はどれくらいなの?
 A:地域によって違いますが、普通の食べ物は百~三百ゴールド、魔力回復薬などのいわゆる「アイテム」は五百~八百ゴールド、服は千二百~二千ゴールド、鎧や杖や剣などの冒険者向け装備は三千~五千ゴールド、宿屋の一泊は一人千ゴールド、くらいです。ギルドに来るクエスト、中でも赤い紙のものをこなせば万単位のGが手に入ります。
◆Q4:スロープってどんなどうぶつでも良いの?
 A:実在するどうぶつならなんでも大丈夫です。
◆Q5:使用キャラ・出だし担当・成る順・モンスターとのバトルの勝敗・他 が決まりません!
 A:つ [ダイス]
◆Q6:アニモシティとの関連はありますか
 A:アニモシティとイストワールは平行世界(パラレルワールド)の関係にあります。少々設定を弄る必要はありますが、「スロープの国にある、アニモシティという町から来た」というような感じでアニモシティで使用しているキャラを持ってきても大丈夫です。



[12] 【ネイン】

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時11分8秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

「小人族」という呼び名はもちろん身長から来ています。子供なら50cmほど、大人でも120cmほどの体つきですが、可愛らしい外見に反して非常にパワフル。他の種族と比べて魔力は乏しいものの、呪文なんか唱えてる暇があるなら近付いて殴ればいい、の精神で今日も魔物を蹴散らします。そんなに小さいならカフェや酒場やレストランやその他諸々の店で困るんじゃないか?ご安心ください。他の国はともかく、サントルヴィルにある店には必ず、ネイン用の椅子やテーブルや踏み台が設置されています。「物理至上主義」のため、魔法が得意なエルフとは度々喧嘩になるようです。



[11] 【スロープ】

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時10分5秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

獣と人の特徴を併せ持った種族です。バリエーションも非常に豊か。現在判明しているのは狐人、兎人、狼人、猫人、狗人…くらいですが、もしかするとこれ以外にもいるかもしれません。その生態も十匹十色。特定の時間帯だけ野性の血が騒ぎ、自分では止められなくなってしまうタイプ。特定の何かの香りをかぐと、本能のスイッチが入ってしまうタイプ。…少なくともその獣人の生態が分かるまでは無闇に近付かない方が良いでしょう。彼らは大抵の場合鋭い爪や牙を持ち、下手をすればそこらの魔物よりも深い傷を負わせる事ができるのですから。



[10] 【エルフ】

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時09分40秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

長く尖った耳と白い肌、そして全種族一の魔力を持つ種族です。「妖精族」と呼ばれる事もある彼らは非常に長生きで、年齢の下一桁を抜くことでユーマン年齢に換算できる、とされるほど(140歳=ユーマンで言えば14歳くらい、という風に)。比較的賢い者が多い事も特徴です。長い進化の果てに魔力を蓄え・放つ事に特化し、しかし大変に打たれ弱い身体を得たエルフは、"直接殴ったり蹴ったりするのは野蛮、魔法で優雅に戦ってこそ冒険者"という共通認識を持っており、真逆の考え方であるネインとの仲は良くなく、「敵」という程ではありませんが、非常時でなければ力を貸さない程度には悪かったりします。



[9] 【ユーマン】

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時09分20秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

イストワールでもっとも人口の多い種族で、いわゆる「人間」です。短所:特になし。長所:特になし。他の種族のような「生まれついての才能」は何もありません。しかし、だからこそ「才能故の制限」や「種族故の容姿」も無いに等しく、どんなジョブであっても本人の努力さえあれば就く事ができるし、角が生えているとか羽が生えているとか「人間」の枠を逸脱するようなものでなければ、どんな容姿にも自由に設定できます。性格の面では意外と個性的な者が多いようです…そもそもの人数が多いため、目につきやすいのかもしれませんが。



[8] 《クエストボード》

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時08分49秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

木製の掲示板です。難易度ごとに色分けがされた「クエスト」の依頼書が貼られており、それを剥がして持ってゆき、依頼をこなしたら依頼主へ報告。サインを貰ってギルドへ持って帰り、受付に提出するとその場で報酬が受け取れます。紙の色が青に近いほど簡単で、赤に近いほど難しい仕事になります。もちろん報酬額は赤いほうが多いので、腕に自信があるなら赤いものを、ちょっと不安なら青いものをどうぞ。仕事内容は大抵素材採取か魔物討伐のどちらか。素材採取のものでも近辺を魔物が彷徨いていたりするため、油断は禁物です。



[7] 《魔物》

投稿者: Story* 投稿日:2017年 8月 6日(日)23時08分8秒 softbank126014154021.bbtec.net  通報   返信・引用

読んで字の如く、魔なる生き物です。オプスキュリテの淀んだ空気から自然に生まれると言われていて、致命傷を与えると黒い煙とともに霧散します。稀に体の一部が消え残る事があり、それらは武器や薬の素材として重宝されます。喋る・仲間と連携するなど、人間並みの賢さを持つ「オーク」、逆に知能を全く持たず敵味方問わず襲いかかる「スライム」など一部例外もありますが、殆どの魔物には同族か否かを見分ける程度の知能しかありません。なお、この種族及び職業はキャラメイク時に選択できません。


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